S A L U page22 フリーランス獣医師がみた世界その 2 動物たちの色覚事情 SALU 外平動物総合事務所 外平友佳理 ファッションと野生動物 ? 全く関係なさそうではあるけれど、お洒落は 人間だけのものな らず、そして人間も動物の 1 種として興味を持って もらえたら幸いです。 イヌやネコは色が分からない (2 色覚 ) と言われていますが実は哺乳類で はこれが当たり前。私たち「霊長類」だけが赤緑黄が区別できる 3 色覚 の能力を「取り戻した」のです。脊椎動物はもともと多様な色覚を持っ ています。魚はなんと 5色覚!世界がどんな色に見えてい るのでしょう。 哺乳類の先祖は恐竜時代に生き伸びるために夜にこっそり活動するくら しをしていました。暗闇で虫を見つけるには余計な色が見えるより白黒 はっきり見えるほうが有利でした。恐ろしい恐竜がいなくなっていつで も活動できるようになったときに明るい森の中で熟した 赤い実を緑の葉 の中で見つけるために 3 色覚に進化したとされています ( 夜行性のメガ ネザルは 2 色覚のままです )。そんな霊長類の中で人間は特に色彩感覚 に多様性があること、つまり見え方に個人差があることが分かってきま した。SNS で話題になった「The dress」をご存じですか ? 同じドレス の写真が人によって白と金、青と白、青と黒など全く別にみえるものです。 同じものを見ていて実はそれぞれ違うなんてとても不思議です。色彩豊 かといえばクジャクを代表とした鳥類ですが、メスはオスの色だけでな く艶、そして アピール方法(ディスプレイと呼ばれます)について総合 的に判断します。つまり美しさとともに健康的なオスを選び将来自分の 子どもが同じように生き延びモテるための、実にシビアな選択をするの です。おしゃれとはまさによりよく生きること、多様な色覚世界を思い ながら服選びをするのも楽しいかもしれません。ちなみに、鳥も緑内障 や白内障にもなりますが病気の話はまたの機会に。 外平動物総合事務所(SALU) 代表/獣医師・学芸員・獣医学博士 外平 友佳理(そとひら ゆかり) 獣医師として到津の森公園(北九州市小倉 北区)をはじめ動物園で 20 年勤務。 その経験と実績を広く社会や地域に活 かすため、2019年9月にフリーランス として独立。フットワークの軽さを活か した往診スタイルで、幅広い動物種に 対応した訪問診療の他、幅広いネット ワークを活かした環境保全活動・社会 教育活動・地域支援活動なども精力的 に行っている。 ① ▲繁殖期だけ美しくなるオシドリのオス ▲ディスプレイ中のクジャクのオス ▲The dress ▲オニオオハシはオスもメスも同じく美しい ▲巨鳥アンデスコンドル ▲人気者ハシビロコウ
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