R-magazine-vol.5

L A W E R page23 解雇と給与減額 「人手不足」がよく言われているようですが、正確には「人材不足」なのではない かと思うことがたびたびあります。すなわち、雇用したものの期待していた人材では ない、というケースが多々あります。まず知っていただきたいことは、日本では解雇 はなかなか難しい、給与の減額はもっと難しい、ということです。 経営者の方には、30日分の解雇予告手当を支払ったから解雇できる、給与に見合 わない労働者の賃金は減額できる、と考えておられるかたが多数おられます。 しかし、労働能力の欠如、労働意欲の欠如を理由とする場合も含め解雇するのは容 易ではなく、当該労働者がミスをする毎に始末書を書かせて、最初は戒告処分、次に 減給処分(これも法律で減額金額は制限されています)、休職処分そして解雇という 段階を経なくてはならず、かなり面倒でストレスが溜まります。 給与の減額(上記減給処分とは異なります)は解雇よりも困難であり、特に基本給 を一方的に減額することは不可能です。 但し、解雇にしても、給与の減額にしても、当該労働者の同意があれば可能です。 これは覚えておいて損はないのですが、日本の裁判所は「当事者の同意」を極めて 強く尊重する傾向にあります。したがって、経営者の方が、労働者をやめさせよう、 給与を減額しよう、と考えたならば、経営者の方が直接(人に任せるのはよくありま せん)当該労働者と真摯に話し合って説得すれば、私の経験では90%以上のケース で労働者は退職、給与減額に同意します。 その場合には必ず書面を残すことが大切です。 これも覚えておいて損はないと思いますが、日本の裁判所は、証拠として証言ではな く書面を重要視しますので、退職届を提出させ、給与減額合意書に署名させることは 忘れないようしてください。 最後に私の顔写真を添付します。これは8月にアイルランドでボートに乗った際に、 船長が乗客に一人一人に笑顔を作らせるために「ギーネース」(アイルランド起源の ビール)と言わせて撮影したものです。 公認会計士・弁護士 加藤哲夫 談

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