R-magazine_ver6

page23 L A W E R 1 遺言について 今回は遺言についてお話させていただきます。 遺産相続については相続税の基礎控除額が変更されたこともあり、 皆さんの興味関心が高まってきており、SNS等で知識を得ておられる方も 多数おられることと思いますが、誤解されている点も複数あり、 遺産相続で紛争が生じないための手段として勧められることが多い「遺言」について 当職の経験を踏まえて述べさせていただきます。 2 遺留分について 最初に注意しなくてはならないのが「遺留分」です。 被相続人がどのような内容の遺言を作成しようと、被相続人の直系血族または配偶者には 遺留分請求権(正確には遺留分減殺請求権ですが、遺留分請求権と簡略化します)が 認められています。 先日も亡くなられた叔母さんから生前に全財産を譲り渡すという 遺言を作成してもらっていた方(亡くなられた方の姪御さん)が 当職の事務所に相談に来られました。 叔母さんの夫から遺留分請求を受けることになりそうだとのことです。 叔母さんは子供がおらず、法定相続人は叔母さんの夫のみですが、 この場合には叔母さんの夫は叔母さんの全財産価値相当額の1/2につき 遺留分請求を行なう権利があるのです。 しかも、以前は遺留分請求に対しては遺産の一部を譲渡する方法での対象が可能であったのに、 前回の民法改正により、価値相当額を金銭で賠償することになり、 金銭捻出のために遺産を売却するにしてもただちに売却することが容易ではない ケースも多々あり、また、不動産や有価証券を売却する場合には課税が発生し、 いずれにしても、遺留分の請求を受ける立場の方は 遺言で財産を貰えることになったからといって喜んでばかりはいられないことになります。 父親から事前に遺言の内容について相談を受けたならば、 自分にとって不要と考えられる財産は他の法定相続人に相続させる旨の遺言を 作成してもらうことでダメージを軽減させることが可能となります。 また、反対に遺留分請求をされる方が注意しなくてはならないのは 遺留分請求の有効期間です。 すなわち、遺留分請求は相続開始を認識してから10年、 相続・遺留分侵害を認識してから1年間のいずれか早い方で有効期間満了になります。 ですから、例えば、被相続人が亡くなった後に遺言書を見せられて すべての遺産を自分以外に遺贈する内容を確認したならば 1年以内に遺留分請求をしないと遺留分請求権は消滅します。 3 遺言の書き替え 遺言は作成した後に書き替えることが可能となります。 したがって、そのことからも、遺言を作成してもらったといって 喜んでばかりはいられないことになります。 どうしてもほしい財産があるならば、遺言ではなくて、 相続時精算課税制度を利用した生前贈与が賢明です。 父親名義の土地に長男が長男名義の建物を建てて住んでいるケースがあります。 長男としては父親は土地は自分に相続させるべきと考えて、父親に依頼して その旨の遺言書を作成してもらったところ、その後に父親が次男に唆されて内容を 変更されてしまっていた、となると、後に作成された遺言書が有効になります。 このような事態を回避するために父親の生前に土地の贈与を受けておくことが有効です。 すなわち、2500万円内の価値相当物の贈与であれば贈与を受けた 翌年の3月15日までに申告しておくと贈与税の課税を免れることが可能となり、 贈与された土地につき相続発生後に相続税の対象として 相続税の申告を行なうことになるのです。 公認会計士・弁護士 加藤哲夫 談 弁護士からのお話しページ

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