R-magazine_ver6

page4 鬼にもなる。非日常を表現し、その世界に 浸り、ただ踊りに溺れ、息もできない幸せ。 もちろんそれは鑑賞することでも感じられ ます。 あなたにも、溺れ、流され、それでも離れ られない幸せ、ありますか。 統計で、幸せだと感じる人が持っていて、 そうでない人が持っていないものが分か っているそうです。なんだと思いますか、 それは、趣味だそうです。 花柳多智雛です。 下関市・北九州市を中心に、日本舞踊を 学び、教えています。 『なにかに溺れる幸せを』 国立劇場での新作舞踊公演「舞姫」出演 のため、稽古と本番でほぼ一ヶ月のお江 戸生活を終えて帰って来たばかりの頃、 この原稿の依頼を受けました。 舞台に向け濃密な期間を終えて、まだ心 身ともに劇場に置いて来たままのような 状態で、終わりがあると知っていて燃え る恋をしたような、興奮したままのウッ トリした疲れを感じていた頃ですから、 まず伝えたいことといえばこれでした。 日本舞踊という舞台芸術を通して、わた しに何が伝えられるのか、 あるとしたら、 ひとつは間違いなく、我を忘れて心や体を 委ね、打ち込めるものがある幸せの存在。 多様な人物、または動物、花、また 風になり海になり森になり神様、仏様、 非日常の舞台芸術の鑑賞を趣味にしてみ ませんか。それが日本舞踊だったら嬉し いです。 『暮らしのなかのお稽古ごと』 さて、日本舞踊は舞台芸術としての楽しみ はもちろんですが、お稽古ごと、習いごと としての関わりも楽しいものです。なにし ろ、着物自体が踊りの道具のひとつになり ますから、着物や浴衣を着なければ始まら ない。ひと月のうち、幾日かだけでも和服 で過ごす日ができる、それが積み重なる生 き方ってなかなか良いと思いませんか。 T A C H I H I N A

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